プラークは簡単にとれるのか

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プラークは簡単にとれるのか

日本人の成人約80%がかかっていると言われている歯周病。その原因となるのが、歯と歯の隙間や、歯と歯肉の境目にたまるプラークです。プラークは歯垢とも呼ばれますが、実際には細菌とその代謝物(排泄物)が混ざり合ってできた塊で、1gのプラークには1~3兆もの細菌が住み着いています。

本来、歯に付着した細菌は、たいてい唾液で流されるのですが、歯と歯の隙間のように唾液が届きにくい場所に付着すると、そこに留まってどんどん増殖していきます。その表面を唾液由来の糖タンパクであるペリクルが覆うと頑丈なプラークになり、そのまま放置すると数日で石灰化して硬い歯石となり、もはや歯磨きでは除去できなくなってしまいます。しかし、歯石になる前のプラークの状態なら取りやすいので、毎日丁寧にケアすれば大丈夫ですが、歯ブラシを使っただけの歯磨きでは歯と歯の隙間には届かないので、プラークが残ってしまいます。そこで、歯科医師や歯科衛生士がすすめるのが、デンタルフロスや歯間ブラシなどで行うプラークコントロールです。この話をすると、よく「歯と歯の隙間が広がってしまう」「歯肉を痛めそう」などと言う人がいますが、これは大きな誤解です。実際日本には爪楊枝文化があり、正しくない使い方によって隙間が広がってしまった経緯があります。欧米と異なり、デンタルフロスなどの使用率が日本では非常に低いのも、この誤解によるものでしょう。

たとえ歯並びが綺麗な方で、丁寧なブラッシングを心がけているとしても、唯一この歯間だけは歯ブラシでカバーできません。デンタルフロスは歯と歯が接触している部分、たとえば爪楊枝でも食べかすが取れないような部分の付着物をきれいに清掃できるので、むし歯予防にもなりますし、プラークを除去することで歯周病も予防できる優れモノなのです。そのため、よほどのすきっ歯でない限り、一日一回デンタルフロスを使用することをおすすめします。また、歯間ブラシは、ブリッジや連固冠などで2歯以上つなげている部分や、歯と歯の間、歯と歯肉の間が大きくあいている場合の歯周病対策に効果的です。正しい使い方や自分にあったサイズの選び方などは、かかりつけの歯科衛生士に相談するとよいでしょう。

さらに、私が推奨するのがシュガーレスガムをだらだら噛むことです。ガムをかむと唾液がどんどん分泌されますので、口の中の雑菌が効率よく流されていきます。雑菌の活動が弱るとプラークの量も減りますし、質が変化して従来のような粘り気が少なくなり、歯に付着してもはがれやすくなることがわかっています。シュガーレスでキシリトール入りのガムにすれば、虫歯と歯周病両方の予防にもつながるので、おすすめです。

 

次にストレスでおこる歯科疾患についてです。歯科疾患の中には、虫歯や歯周病のように食事やブラッシングの不備といった口腔衛生に関わるものとは別に、心の問題がきっかけになるものがあります。心の問題、つまりストレスが大きな要因となって引き起こされる歯科疾患があることが歯科業界ではよく知られています。しばしばみられるのが、歯の摩耗や知覚過敏といった歯への傷害。そして顎関節症や開口障害など顎関節への障害、また口内炎や頭痛、めまい、肩こり、歯周病の悪化もストレスとの関連があります。

「心の問題」がなぜ、歯や口の中の疾患にかかわるのかとお思いでしょう?人はストレスを感じるとそれが脳に伝わり、体が反応するようになっているのです。

たとえば強いストレスにさらされている人は、それに耐えようとするあまり顎に力が入り、無意識のうちに歯を食いしばったり、睡眠中に歯ぎしりをしたりします。

この噛みしめや食いしばりは、顎や歯に大きな負担をかけるのです。噛みしめの多くは無意識ですから、仕事や勉強に集中しているときや寝ているときなどにぎりぎり歯をこすりあわせているということがほとんどです。歯と歯が常に接触している状態なので、歯が必要以上にこすられて表面が摩耗し、エナメル質に目では見えないヒビが入るほか、根本が欠けることがあります。すると冷たいものや熱いもの、甘い、酸っぱいなどの刺激が象牙質から直接、神経に伝わり、痛みを感じる知覚過敏を起こすのです。

また、精神的な抑圧で痛みに過敏になることもあるので、ストレスを取り、噛みしめ癖を改善すると知覚過敏の症状も落ち着くというケースはよく見られます。

さらに食いしばりで強い力がかかることによって歯が欠け、折れる場合もありますし、顎の関節が動かしにくくなり、食事の時に痛むなどの症状がみられる顎関節症を起こす人もいます。顎関節症は若い世代に増えており、ストレス社会の功罪と考えられます。

ストレスを抱えていると日常の細かいことに気が回らなくなって、口の中にいる常在菌が増えやすくなります。これが口内炎の原因となり、歯周病の悪化につながるのです。

知覚過敏や顎関節症、たびたび口内炎を起こすなどの症状に自覚がある人は、まず何がストレス源になっているかをよく考えて、ストレスの緩和や解消を心掛けるとよいでしょう。自覚のない人も、一度頬の内側や舌の縁をみて、歯型の凸凹がついていたら噛みしめを行っている可能性がありますので、ストレス緩和と噛みしめ予防に気を配ってください。